サッカーマンガといえば?
一番に名前が上がるかどうかは別にしても「キャプテン翼」は多くの人が頭に浮かぶことでしょう。
スポーツマンガといえばスポ魂という時代に、才能があってカッコよく頂点を目指す「ヒーローもの」のようなマンガで、翼くんや岬くんの活躍や、国内外のライバルたちとの激闘にワクワクしたものです。
そんな時代に登場した高校サッカーマンガ「オフサイド」です。
勝手に評価
絵 :スッキリ優しい絵でありながら、迫力とスピード感満点!
ストーリー :ストーリーとしては良くある「次々に出てくる強敵を倒す」パターンですが
仲間やライバルとの関係がグッとくる。
感動 :単純に面白い。試合後にスカッとする。
おすすめPoint
少年マガジン連載当時、「サッカーマンガ」は多くあったけれど、クラブ物がほとんどだったので「部活ものを描こう」ということではじまったそう。
「サッカー部もの」のパイオニアとして読んでみると最近のマンガと通じるものが見つかったり。
塀内夏子さんの描く人物って、カッコよくて魅力的なんですよね。
お話
サッカーといえばやはりカッコよく点を取るストライカーや、ゲームをコントロールするミッドフィールダーが主役のお話が多い中、「オフサイド」の主役は大型のゴールキーパーです。
3年間一度も勝ったことが無い弱小中学サッカー部のゴールキーパー熊谷五郎。
中学最後の大会も味方のミスから失点し結局勝てずに3年間が終わろうとしています。
そこで「最後に一度くらいは勝って終わりたい」と練習試合を組みますが、呼んできたのは実力は断トツでありながら素行不良で大会に出られないために無名校だった中学校。
五郎のガッツあふれるキーピングと的確な指示で辛くも1点をもぎ取り念願の初勝利を挙げます。
そこで出会ったフォワードの薬丸と佐藤のコンビと、名門「横浜南」のサッカー部での再会を誓います。
ところが不遇な事故にあい横浜南を受験できなかった五郎。道を隔てた「私立川崎高校」に進学したところで薬丸と佐藤のコンビと再会します。
「横浜南」の5軍の練習相手をさせられていた「川崎」サッカー部。5軍とはいえさすがに名門校のサッカー部を相手にしていたので実は力のあるチームで、もともと「キーパーがいなかったから勝てなかった」チームに五郎が加わり、中学ではピカ一の実力を持つ薬丸・佐藤のコンビを加え、またけがでチームを離れていたものの実力者のキャプテン「織田さん」も戻ってきての高校サッカーチャレンジが始まります。
いろいろ驚きポイントやお気に入りシーンやキャラクターもあるのですが、一つ上げるごとにネタバレになるので涙を呑んで我慢しておきます。
話が進むにつれて五郎の周りにも変化が訪れ、ライバルも増えて登場人物が増えていきます(当然です・・・)が、どのキャラクターもつい感情移入してしまい、マンガの世界なのに「これでは彼の高校生活はどうなってしまうんだ?」と本気で心配してしまったりします。
その中でも五郎のオールマイティー(でもないところが端々に出てきますが)なキャラクターが愛すべきところで、
「高校の部活ってこうあるべきだよね」とか「これってあるある」
というところがたくさんあって、今更ですが「手が届かなかった青春時代」(言っててこっ恥ずかしいですけど)に戻った気分になるのも良いモノだなと思わせてくれました。
連載時に「少年マガジン」で読んでいたこともあって、タイムスリップ感がマシマシでした。
作家さん
連載開始時は「塀内真人」さんの名義で、カッコよさの捉え方と優しい表情がすごい、只者ではないなと思っていたら「塀内夏子」さんに変わって、「あ、女性の先生なんだな」と納得しました。
女性ならではのタッチと「カッコよさ」と、力強さと動き感がきちんと同居していて、スピード感のあるスポーツマンガになっています。
塀内夏子先生自身は連載当時「男になるためです」と読者からの「名義変更」についての質問に答えられていましたが、この作品に関しては「女性作家」さんだからこその味が存分に発揮されていると、いま読み返してもそう信じられます。
コマ外の余白の書き込みもなかなかおもしろくて、作品に取り組む姿勢が感じ取れたり、余白も余さず読んでもらいたいです。
まとめ
スポ魂マンガやキャプテン翼のようなヒーローサッカーマンガの時代から、このマンガで路線が変わったというか広がった作品ではないかと思います。
全てのサッカーマンガを知っている訳では無いので完全に個人の勝手な思いですが、
もっと最近の「DAYS」などにつながる空気感、ここからきてるんだなと。
